バリスタエッセイ「ナカノ永久機関」
朝の儀式
2018年2月2日(金)
出勤したらまずエスプレッソマシーンを起動し、試運転でコーヒーを淹れる。それが朝一番の儀式だ。
マシーンのスチームレバーを下げて、パワースイッチをオンにする。十五分ぐらい経ってボイラーが温まってくるとスチームノズルから水滴が出てくる。それが蒸気に変われば暖機運転は終わりとなる。
グラインダーでコーヒー豆を挽く。誰もいない静かな店内にコーヒーの香りが漂う。挽いたコーヒーパウダーをポルターフィルターのバスケットに小山盛りに盛る。余分な粉を指で払い落とし、タンパーで押し固める。しっかりと丁寧に。
ポルターフィルターをマシーンにセットして、エスプレッソの抽出ボタンを押す。三十秒ほどで赤茶色のとろりとしたエスプレッソが出たら成功だ(抽出は気温や湿度の影響を受けるので、もし失敗だったらグラインドやタンピングで調整しなければならない)。
それと同時にミルクを温める。ステンレスのピッチャーに注いだミルクにスチームノズルを沈め、スチームレバーを下げる。蒸気が一気に噴出して、ミルクが波打つ。はじめは空気を取り込んで泡を立て、だんだん泡を潰しながら滑らかなフォームに仕上げる。
いよいよミルクの注ぎだ。気持ちを落ち着ける。雑念を払い、成功のイメージだけを浮かべる。そして一気に注ぐ。
注ぎ終えたらアート、味、香り、そして舌触りを確認する。いつものとおりだったらOK。
儀式を無事終えたらさあ開店だ。

中野隆靖 Takayasu NAKANO
1972(昭和47)年、静岡県生れ。武蔵工業大学工学部卒業。2011年、カフェナカノ開業。オーナーバリスタ、ラテアーティストとして活躍中。

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