バリスタエッセイ「ナカノ永久機関」
中野嘉平
2018年1月26日(金)
数日前、唐突に妻は言った。
「とてもへんな夢を見たの」
「どんな夢?」と僕は相づちを打つ。
この手の話はたいして意味がなくても、聞いておかないと後々面倒なことになる。
「テレビのクイズ番組に私たち二人で出ていて、司会者が『次はサービス問題です』と言ったの」
「うん、それで?」
「それでね、司会の人が『社会科の教科書にも載っているこの人は誰でしょう?』と言って写真パネルを見せるわけ」
「ほう」
展開がまったく見えない。
「そうしたら、あなたが真っ先に回答ボタンを押して自信満々に答えたの。ピンポン。『中野嘉平』って」
「へえ」
「それで『正解』ってなるんだけど、私が横で『そりゃわかるよね。だっておじいちゃんだもん』って言うの」
「なんだそりゃ」
「そこで目が覚めて『なんだ今の夢。おじいちゃんは中野嘉平じゃないし』って思ったの」
「中野嘉平って誰?」と僕は問いかける。祖父の名前は栄一で、社会科の教科書にも載っていない。
「知らないよ。でも坂本龍馬の写真を見て、坂本龍馬だとわからない人いないでしょ?それと同じ雰囲気だったの。中野嘉平って」
僕は苦笑いしながら言った。
「だから誰だよ」
「知らない人。そういう夢なんだもん」
やれやれ、オチも何もないようだ。
「なかのかへい。かへいなかの。カヘイナカノ。カフェナカノ。そういうことなんじゃないの?」と僕はこじつけて言ってみた。
「それだ」
やっぱり意味がわからなかった。

中野隆靖 Takayasu NAKANO
1972(昭和47)年、静岡県生れ。武蔵工業大学工学部卒業。2011年、カフェナカノ開業。オーナーバリスタ、ラテアーティストとして活躍中。

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