バリスタエッセイ「ナカノ永久機関」
女のいない男たち
2018年1月12日(金)
男からすると一瞬ドキッとする表現だと思う。非常にデリケートな、あるいはセンシティブな、兎にも角にもそんな事情があるのだろうということだけは想像できる。女の人の場合はどうなんだろう。ただ単純になんとも思わないのかしら。
さて、これは村上春樹さんの短編小説集のタイトルである。
タイトルをモチーフにした六つの短編小説が収められていて、いずれも大人の恋愛の(あるいは様々な事情のある)物語だ。
村上さん自身も前書きで書いているように、音楽でいうところの「コンセプト・アルバム」といった趣だ。ビートルズの「サージェント・ペパーズ」やビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」を意識したんだそう。
物語の雰囲気を音楽にたとえるなら、村上さんの造詣が深いジャズというよりはAORといった印象だった。一貫してボッサやレゲエの気だるさのようなものが漂っているというか。そういう意味でわりに好みの作品だ。
一冊の本としてみればどれもさらっと楽しめる小洒落た物語だ。でも村上さんのこれまでの作品の年譜から考えるとわりに重たいテーマな気もする。
というのも、これまでにも喪失感を描いた物語はたくさんあるけれど、それらとはいささか違っているように感じたからだ。
男と女の関係性は見慣れたものなのに、起因となる事情はいくらか共感しづらいといったように。
まあ、世の中割り切れることばかりではないですけどね。

中野隆靖 Takayasu NAKANO
1972(昭和47)年、静岡県生れ。武蔵工業大学工学部卒業。2011年、カフェナカノ開業。オーナーバリスタ、ラテアーティストとして活躍中。

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