バリスタエッセイ「ナカノ永久機関」
麋角羊歯
2017年12月15日(金)
麋角羊歯って知っていますか?
何やら難しい漢字が並んでいるけど、故事成語でも四文字熟語でもない。
「ビカクシダ」と読み、麋角はヘラジカの角を、羊歯はシダ植物のシダを表す。つまり、ヘラジカの角のようなシダ植物ということだ。
観葉植物としてはわりに珍しいもので、店に二つほど飾ってある。
ビカクシダは熱帯域に生育する植物で、樹木の幹などに着生し、そこから大きく広がる葉がヘラジカの角のように見えるのがその由来だ。
よく映画とかで外国の家の壁に鹿の首の剥製が掛かっているのを見たことがあると思うんだけど、あんな形の植物だと言えばいいだろうか。何を言っているのかよくわからないかもしれない。でも実際のところそんなふうにしか説明できない。
派手な見た目だけでなく、体の仕組みもちょっと不思議で、二つの葉から成り立っている。 一つは巣葉という盾状に広がる葉で、もう一つは普通葉という細長く伸びて垂れ下がる葉だ。樹木の幹を覆う巣葉が鹿の首のように見え、そこから伸びる普通葉が鹿の角に見えるといった具合だ。
拙い説明だけれど、少しは想像できるようになってきただろうか。パインアップルとかグレープフルーツとかを命名した人の苦労がわからなくもない。見たことがない人に説明するのって本当にむずかしい。
ちなみに園芸店ではコウモリランという名前で売っていたりもするんだけど、そのネーミングもなんのこっちゃって感じる。

中野隆靖 Takayasu NAKANO
1972(昭和47)年、静岡県生れ。武蔵工業大学工学部卒業。2011年、カフェナカノ開業。オーナーバリスタ、ラテアーティストとして活躍中。

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