バリスタエッセイ「ナカノ永久機関」
満員電車
2017年9月8日(金)
僕は浜松で生まれ育って、今も浜松で暮らしている。
これまでの人生で浜松から出て生活したのは大学の四年間だけだ。川崎市中原区のアパートに三年、世田谷区の賃貸マンションに一年住んだ。
川崎のアパートから大学へはもちろん電車で通学する。アパートの最寄り駅は東急東横線の元住吉駅で、大学は東急大井町線の尾山台駅だったから、自由が丘駅で乗り換えというパターンだ。
わりに真面目な学生だったので、朝九時の一限目からちゃんと出席していた。一限目に間に合うように東横線に乗ると当然ながらラッシュアワーで、すし詰めの電車に押し込められる羽目になる。二十分程度の乗車でもけっこうな苦痛だ。
東京の満員電車の混み具合といったら常軌を逸しているとしかいいようがない。でも、そこに居合わせている人は皆、文句ひとついうわけでもなく、じっと苦痛に耐えている。通学ならまだしも、通勤は耐えられそうにない、と人波に揉まれるビジネスマンを見て思ったものだ。
それはそうと、僕が通学していた時はまだ地下鉄サリン事件の前だったので、ホームにゴミ箱が置いてあったし、車内に新聞や雑誌が置き去りにされることもざらにあった。
その新聞や雑誌がその日に発売されたものだったりして、手に取って読んだりもした。
今も昔も満員電車は嫌なものだけど、東京も昔はいくらかおおらかだったんだろう。

中野隆靖 Takayasu NAKANO
1972(昭和47)年、静岡県生れ。武蔵工業大学工学部卒業。2011年、カフェナカノ開業。オーナーバリスタ、ラテアーティストとして活躍中。

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