バリスタエッセイ「ナカノ永久機関」
ペアルック
2017年8月04日(金)
普段、仕事では店のロゴ入りのTシャツを着ている。黒地にビビッドなピンクの(厳密にはマゼンタなのだが)くまのイラストのロゴが入ったTシャツだ。
閉店後の次の日のための仕入れもその仕事着のまま出かける。日によっては晩ご飯を自分で用意するのが面倒な時もあって、そんな場合は近くのレストランで食事も済ませてしまう。
いずれにせよ目立つ仕事着で出かけるというのは店の看板を背負ってるのと同じなので、なんとなくの気恥ずかしさがあるのだけど、コソコソする様なことでもないし、宣伝の一環だと自分に言い聞かせて開き直っている。
うちの店は夫婦で営んでいるから当然ながら二人ともその格好で出かけることになる。すると時々店の人から「ペアルックいいですね」とか「仲良しなのが憧れます」などと声をかけられる。時には「新婚さんですか?」と訊ねられることもある。たいていは接客の上手な女性の店員だ。
こちらとしては、ペアルックでも新婚でもないので(結婚してもう十五年以上経つ)、申し訳ない気持ちになるのだけど、あからさまに否定するのも野暮なような気がして、「いや、まあ」といった具合に曖昧な返事になってしまう。
そして、いつも後で「はにかんだ笑顔の一つでもできた方が良かったかしら」と二人で反省会を開くことになる。
次こそは期待に応えられるように初々しい新婚さんの演技ができるといいのだけれど。たぶん無理だろうなあ。

中野隆靖 Takayasu NAKANO
1972(昭和47)年、静岡県生れ。武蔵工業大学工学部卒業。2011年、カフェナカノ開業。オーナーバリスタ、ラテアーティストとして活躍中。

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